小説家になるために様々な作品を書いてきましたが、いつも身近にあることをテーマにしてきました。
学生の時は教師目線で書いた小説を書きましたし、社会人になってからは働いている職種を舞台にした作品を書きました。
しかし身近にあったテーマだけでは、作品の幅が広がらないと感じたので、取材をして今まで書いたことがない分野にチャレンジしてみようと考えるようになりました。
最初に思いついたのは、家の近くにある板金工場を舞台にしたものでした。
会話シーンのリアリティの為、現地へ!
板金工場は下請け工場として自動車部品を作っていますが、部品の単価を今までよりも下げるように取引先からいわれてしまい、反発するという小説を書こうと考えました。
取引先の言いなりになるのではなく、より精巧な部品を作って、新しい取引先を見出して販路を拡大しようという前向きなストーリーにしたいと考えました。
ただ工場で働く人たちの会話を想像したものの、リアリティが不足していると感じたので、現地で取材をさせてもらうことにしました。
事前に連絡をしたところ、最初は小説の舞台になることに戸惑いを感じられたようですが、丁寧に説明すると興味を持ってもらえたようなので、歓迎してもらうことができました。
取材を申し込んだときに話しを聞いてくれた工場長さんが、自分と年齢が近くて小説好きだったことも良かったようです。
おかげで現地で工場で働く人たちの生きた会話を聞くことができるようになりました。取材をするのは初めてなのでかなり緊張しました。
板金工場さんってこんなとこだった
板金工場の前を通ったことはありますが、工場内に入ったことはなかったので、緊張しながら入らせてもらいました。
事前に約束をしていたので、工場長さんが迎えてくれて、作業をしているところを自由に見せてもらうことができました。
精密板金を行っているので、溶接を行うときにかなり火花が飛び散ったりしているのではないかと考えていましたが、工場内はとても涼しくて快適だったので驚きました。
工場長さんに話しを聞くと、以前は予想していたように溶接作業で工場内がかなり高温になることが多かったようですが、今は改装工事をしたのでエアコン設備が整い、快適に仕事ができるようになったということでした。
作業員は高温になる機械を使用するときは長袖を着用していますが、それ以外は軽装だったので、確かに快適な職場だと感じました。
それに日本の精密板金の価値が見直されていることから、一時は工場の経営が大変なこともあったけれど、ここ10年ほどは比較的経営が安定しているということでした。
現地で取材をしたことによって、ストーリーの大幅な変更をすることになりましたが、その分、リアリティを追求できるようになったので満足しています。